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2018年5月25日 • ガイド

リモートワークが増える現在、オフィスデザインの在り方とは


リモートワークを導入する企業が増えています。リモートワークを導入すると、「オフィスに勤務する社員の数が減る」「オフィスのデジタル化が促進される」というように、働き方そのものに大きく影響します。働き方が変われば、業務遂行に必要なツールや執務スタイルも変わり、それらの変化はオフィスデザインにも波及します。

リモートワークがもたらすメリットとデメリットをふまえつつ、働き方改革がオフィスデザインに与える影響を考えてみましょう。

働き方改革の象徴、リモートワーク

リモートは「遠隔」という意味。「リモートワーク」とは、自宅やコワーキングスペースなど、普段の職場から離れた場所で仕事をすることです。「テレワーク」「ホームオフィス」「在宅勤務」などと呼ばれることもあります。

リモートワークの先駆けはアメリカのIBM社だといわれています。アメリカのように国土が広大だと、自宅から勤務先への通勤が困難な場合があります。かといって、勤務地の近くに住む人しか採用できないのでは、人材確保の面でマイナスです。そこで、勤務地から遠く離れた場所でも仕事ができるように考案、導入されたのがリモートワークです。

日本の場合、国土もそれほど広くなく、交通網も整っているので、遠隔地から通勤することは(アメリカよりは)難しくありません。「リモートワークを導入すべき切実な事情がある」とまではいえません。

ただ、国内の労働人口が減少し続けることが確実視されるなか、「働き方は、社員の生活スタイルや価値観にあわせてもっと多様化すべきだ」という考え方が標準となりつつあることはたしかです。これは時代の趨勢であり、あえてその流れに反発してオフィス勤務に固執することは、企業の社会的評価を下げる要因にもなりかねません。

このような背景も手伝って、日本でも「働き方改革」の一環としてリモートワークを導入する企業が徐々に増えていき、その流れは加速し続けています。現在では、IT系企業だけでなく、トヨタや日産といった製造業などでもリモートワークの導入が進められています。

ある企業の場合、東北の震災がリモートワークを導入するきっかけとなったといいます。原発事故のような緊急事態が生じたとき、社員に対して、自分や家族の生命をも犠牲にして、いつもと変わらぬペースで通勤するよう強いるのはあまりにも酷です。また事業所を1箇所に限定・集中させてしまうと、いざ非常事態が起きたときには長期間にわたり業務そのものが維持できなくなります。リモートワークを導入し、社員の勤務地を固定しないことは、経営上のリスクヘッジにもなりうるわけです。

リモートワークのメリットとデメリット

リモートワークを導入することには、社員や企業にとって次のようなメリットがあります。

(1) ストレスの削減
オフィス勤務がなくなると通勤のストレスがなくなります。オフィス内の人間関係に悩んでいる人にとっては、苦手な同僚と顔を合わせずに済むことは多大なメリットです。オフィスでの長時間労働が心身の不調を招いている社員の場合、在宅勤務に切り替えることで症状の快復も期待できます。

(2) コストの削減
デスクやパソコンなどの事務用品にかかるコスト、光熱費や交通費を削減できます。企業が地方に事業展開する場合、支社や支店という形で新しいオフィスを開設するのがこれまでの通例でしたが、リモートワークが広く浸透していけばそのコストも不要になります。

(3) 離職率を下げる
リモートワークとオフィス勤務の使い分けを認めることで、家族の介護や看病、育児などが理由でフルタイムの勤務が難しい社員も仕事を続けることができます。選択肢が多く、労働のしばりが少ない職場では、社員の離職率も低下します。

他方で、リモートワークにはデメリットもあります。

(1) 勤務評定が難しくなる
管理職による勤務評定では、部下と日々直接顔を合わせることで得られた情報も参考資料となります。リモートワークを導入すると、「社員が自宅でどのように仕事をしているか」のチェックが難しくなります。また、オフィス勤務の場合、毎日休まず、遅刻せずに通勤しているからこそ、「最低限、それなりに頑張っている」という評価が可能となりますが、リモートワークにするとその評価要素が使えなくなります。

(2) 生産性が下がる場合もある
「リモートワークを導入すると生産性が向上する」という認識がありますが、これはそうとは言い切れません。たしかに、通勤などに奪われる時間を業務に回せるので、可処分時間は増えるでしょう。しかし、「他人の目」がなくなるので、人によっては怠けてしまうこともあります。また、オンとオフの境目がなくなると、集中力が削がれ、業務のペースが落ちる人もいるでしょう。

(3) 迅速な意思決定ができなくなるかも?
いわゆるブレインストーミング形式の会議やディスカッションをスムーズに行うためには、社員同士が同じオフィスにいることが必要です。リモートワークだと、(PCカメラを常時接続しているのでもないかぎりは)社員がデスクにいるかどうかを確認できません。しかも、意見交換の手段が、電話・メール・チャット・スカイプ・ビデオ会議などに限定されるため、「必要なタイミングで声をかけて、Face to Face(直接対話)で意思決定をする」というスピーディーな行動は難しくなります。2017年にアメリカIBM社は、これまでの完全リモートワーク制を改め、全社員に原則としていずれかのオフィスに所属し、上司の求めがあれば出勤することを義務付けましたが、これも意思決定の迅速性を重視したためです。

リモートワークを可能にするオフィスデザインとは?

以下に挙げるように、リモートワークとオフィスデザインは相互に影響しあう関係にあります。

(1)意思疎通用ツールのデジタル化
チャットやスカイプ、ビデオ会議は、リモートワークを導入するならマストです。今やこれらのシステムは、かつての電話やFAXと同等のごくありふれたシステムですので、導入するのにことさら大きな壁はないはずです。ただし、在宅勤務の社員にPCカメラの「常時接続」を求めるか否かは、プライバシーの問題があるため慎重な判断が求められます。

(2)企業が所有する情報のデジタル化
リモートワークでは、本来オフィスで保管すべき情報を自宅等に持ち込んで仕事をすることになります。部外秘の重要書類を持ち運ぶわけにはいきませんから、業務に使用するあらゆるデータをデジタル化しておくことが必要となります。

情報をデジタル化すれば什器類を簡素化できます。また常時出勤する社員が減れば固定デスクの数も減らせます。その分空いたスペースを他の目的のために流用できます。フリーアドレスのデスク、ファミレス席や集中スペースなどはその一例です。社員のリフレッシュを目的としたフィットネススペースやカフェを造るのも良いでしょう。

(3)オフィスでの執務スタイルにも変化が?
リモートワークを導入すると、社員全体に「我が社は多様で自由な働き方を許容している」という意識が広まります。この意識変革は、オフィスでの執務スタイルにも少なからず影響を与えます。

たとえばスタンディングデスクの採用です。「着座での長時間の作業は血流を阻害し、健康上の問題を招く」という研究結果がきっかけとなり、スタンディングデスクを採用する企業が世界中で増えています。社員のリモートワークが一般化すれば固定デスクも大幅に減るので、スタンディングデスクを設置できるスペースも格段に増えます。

一昔前の日本なら「立ちながら仕事をするなんて態度が悪い!」と一蹴されていたでしょうが、現代ではそのような古い意識はなくなりつつあります。「リモートワークの浸透」と「自由なオフィスデザイン」は、根っこの部分で連関しているといえるでしょう。

政府が主導する働き方改革は今後ますます加速すると予想されています。副業やクラウドソーシングと同様に、リモートワークもごくありふれた存在になるはずです。リモートワークが浸透するに連れて、オフィスデザインの自由度も上がります。自由な働き方にふさわしいオフィスデザインを実現することは、これからの経営者にとって重要な仕事だといえるでしょう。